2007年08月31日

トニーバンクスKORG UKインタビュー(3)

さて、トニーバンクスのKORG UKインタビューの最終回は、トニーのシンセサウンドについての姿勢とか、考え方という感じの内容である。



"If I can make a sound that is similar but has more quality, or whatever it is I'm looking for, then I'm very happy to do that. So when I go back to old songs I don't necessarily recreate the sound. Where I feel that it was a crucial part of the song I get it sounding as authentic as possible and I think the audience wants to hear organs, pianos and Mellotron-style strings and voices."
「もし僕がもっと品質のいい似たような音を作れて、それが僕が望むものなら、それでハッピーなんだ。昔の曲をやる時に、必ずしもそのサウンドを再現する必要はないと思ってる。曲の重要な部分だと思ってるところは、できる限り本物に聞こえるように音を作っている。オーディエンスはオルガンやピアノ、メロトロンストリングスやコーラスが聞きたいと思ってるのは知っている。」

ちょっと矛盾したような言い方なのだが、多分トニーとしては、バーチャルシンセまで使って、昔のシンセの音色をシミュレートするのではなく、今の楽器でもっとクオリティの高い似たような音が作れれば、そっちの方がいいじゃない、、という意味のことが言いたいのだと思う。それは、オーディエンスの欲求にもマッチしてるんだから、というニュアンスじゃないかと思う。

Of all the sound creation tools the OASYS has to offer, it is its ability to use several completely different types of synthesis simultaneously which has excited Tony the most.
OASYSが提供するサウンドクリエイションツールのすべては、数種類の異なる合成音を同時に使う事ができる能力を持つ。これがトニーを最も興奮させた点だ。

"It is great to be able to combine quite distinct synthesis forms within one instrument," he explains.
「1台の楽器の中で全く異なる合成音を組み合わせることができるということがすごい」と彼(トニー)は言っている。

"I liked the Arp Quadra because it had four synths together which made you try things you wouldn't otherwise consider.
「私がArp Quadraが好きだったのは、あれは4つのシンセを内蔵しており、考えるかわりにトライしてみることができたからだ」

この辺、トニーの好みが良く出ている部分。ARP Quadraというシンセは、1978年に発表されたポリフォニックシンセサイザー。単純なポリフォニックシンセではなく、ベースシンセ、ポリシンセ、リードシンセ(2音同時発音)、ストリングシンセという4つのパートを1台のキーボードに押し込んだという、ちょっと変わった構成のシンセサイザーである。トニーは本当にこれが気に入っていたようで、1980年のDukeツアーから1986年のInvisible Touchのレコーディングまでの6年間も愛用した。なぜこのシンセが好きだったのかと言うと、どうもこの4つのパートの音色を適当に混ぜ合わせるようなことができたからのようだ。。

I've always been a great believer in leaving things to chance, but the more you use outboard and computer-based stuff, the more you have to think in advance, so it's harder to let things just happen.
私はこれまでずっと、偶然起こることを残していくという事の信奉者だった。しかし、outboard(ボードの外、シンセのコントロールパネル以外の部分という意味か?)やコンピュータ機器を使えば使うほど、事前に考える事が多くなり、そこでおきる事柄に任せるということが難しくなっていく。


日本語訳にやや自信がないのだが、つまりトニーは、1台のシンセの中で作った音を簡単に合成するようなプロセスで、偶然出来上がった、ハッとする音を作るようなことが好きだったということだろう。そうやって偶然出来た音色にインスパイアされて、曲を作るということもあったのではないだろうか。Quadraというのは、そういうトニーのセンスにぴったりはまったシンセサイザーだったので、あれだけ長い間愛用したのだろう。OASYSは、同じような事がかんたんにできるのですばらしいと、トニーは感動しているのだ。

"I've never used a programmer; I've always done it myself because that's part of the fun. On things like the Sequential Prophet, for example, I'd create every sound from scratch or modify presets, but the Yamaha DX7 and the Synclavier changed the way I thought because they were desperately difficult to program, and I started relying on presets to a greater degree.
「私はこれまで決してプログラマーを使わなかった。私は常にそれ(音作り)を自分でやってきた。なぜならそれは私の楽しみの一部だったからだ。たとえば、SequentialのProphetでは、すべてのサウンドをゼロから作るか、プリセット音をいじって作っていた。しかし、YamahaのDX-7Synclavierではそれまで考えていたやり方を変えた。なぜなら、これらはプログラムするのが非常に難しかったからだ。そこで私は、プリセットにより依存するようになった。


"But I have found that with the OASYS I have got back into modifying the sounds much more and that's part of the creative process."
「しかし、私はOASYSによってサウンドを作り出すことに戻ることができた。そしてこれは、クリエイティブなプロセスの一部だ。」

ちょっとびっくりな発言でもあるのだが、シンセの音作りを自分でやることにこだわっていたトニーだったが、初期のデジタルシンセはさすがに難しくって手に負えなかったようでもある。(こんなこと簡単に白状してしまうところが結構正直で人の良さがにじみ出てますなぁ)ところが、OASYSを手に入れて、かつてのARP Quadraのようにイチから音を作り出すことが出来るようになったということなのだ。

これはなかなか重要な発言なのではないかと思う。トニーは明らかに、OASYSを手にして、創作意欲を刺激されているようなのだ。この意欲が、新曲の製作につながってくれることをぜひとも期待したいものである。先日の発言といい、ますますジェネシスの新譜の可能性が高くなっているように思えるのだ。
posted by Holy Knebworth at 21:54| Comment(8) | TrackBack(0) | etc | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
新参者ですがよろしくお願いします。
英語インタビューの翻訳はとてもすばらしいと思います。とても意義のあることだと思いますので、これからもぜひ続けていってください。楽しみにしています。
ところで、ARP Quadraについてですが、outboardというのは外部という意味でしょう。つまり、シーケンサーやコンピューターなどでコントロールしてしまうと完璧になってしまって偶然性が生まれない、という意味ではないでしょうか。
だとすると、実際に手でツマミをコントロールして、あれこれ試すと、いい偶然に出会えるが、外部機器でのコントロールとなると、あらかじめ効果がわかっていることだけのコントロールになるから、偶然性が出てこない、そしてトニーはその「いい偶然性」が好きだ、ということではないでしょうか。
これは割と単純な話で、いろいろなアーティストがデジタルシンセの、主にマルチファンクションキーに不満を持っていたところと同じだと思うのです。トニーはRoland JD800が出た時に、その点で満足した、と言っていましたし、過去にKORG ProViewというフリーペーパーで「マルチファンクションキーを発明したやつは撃ち殺されるべきだよね」と言っていました。
私も同意見で、Roland JP8000とKORG MS-20を持っているのですが、仕事が忙しく持て余しています。
Posted by ジャバウォッキー at 2007年09月02日 12:50
翻訳、ありがとうございます!!
正直というか、うそがつけないというか・・・(爆)
メロトロンが好きではない発言はちょっとショックでした(汗)
あと、これは私の解釈なので、もしかしたら間違いかもしれませんが
トニー様本人は、メロトロンやオルガンの音を再現する気はないのだけれど、
観客はそういう音が聞きたいのは知っているし、あえて重要と思われる部分は、
「本物」(この場合の本物は、昔のレコードのオリジナルの音源をさしているのではないかと思うのですが)の音を作った。
といっているのではないかと思うのです。
いわば、トニー様の粋な計らいなのではないかな〜って。
いつだったかの「ノスタルジアばっちこい」発言ともリンクすると思うんですが・・・

しかし私は語学力全くありませんので、自信はありません。
希望的観測もこめての解釈だったりもしますし(爆)
Posted by えつのすけ at 2007年09月02日 13:18
ジャバウォッキーさん、はじめまして。

解説をありがとうございます。私も、だいたいそんな意味ではと思っていたのですが、こうやってその道に詳しい方からも補強していただくと、心強いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

えつのすけさん、いつもどうもです。

メロトロンが心底好きだというミュージシャンって、案外少ないみたいですよね。以前スティーブハケットと一緒に来日したイアンマクドナルドに、厚見玲衣氏が自分のメロトロンを貸すからステージで弾いてくれと懇願したのに、あっさり断られたなんてこともあったようです。昔使っていたからといって、今も好きかというのは全くの別問題のようですね。
Posted by Holy Knebworth at 2007年09月02日 22:45
確かにメロトロンに関してはリックウェイクマンも売り払ったとか
庭で燃やしたとか燃やしてないとか云ってたような気がします(笑)。
トニー様もこのインタビューは興味深い発言も多く、またツンデレ
っぽいところがいかにも彼らしくてとても楽しめました。
長編レビューありがとうございました。
Posted by at 2007年09月04日 01:07
すいません、名前忘れてました。上の頭悪そうなコメントは私です(笑)。
Posted by Tk at 2007年09月04日 01:09
Tkさん、こんにちは。
やっぱりあのインタビュー見たら、やらざるを得ません(笑)

こんなに内容の豊富なインタビューは久しぶりだったような気がします。また何か情報ありましたら、ぜひ教えてください。
Posted by Holy Knebworth at 2007年09月04日 20:25
お久しぶりです。
某ちゃんねるのトニースレで知りましたが(笑)、
このインタビューがコルグの国内向けサイトにも載りましたね。
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/SoundBytes/TonyBanks/index.html
Posted by Tk at 2008年01月30日 01:59
TKさん、情報ありがとうございます。
さすが、プロの翻訳はわかりやすいですね。あらためて上の訳を見ると、ちょっと冷や汗出るところがあります(笑)

でも、他社のシンセに言及したところがカットされてますね。英コルグHPではそのまま掲載されていたのにねぇ。
Posted by Holy Knebworth at 2008年01月30日 21:12
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/53448285
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック